
「お花屋さんで一目惚れして買ったアンスリウム。
家で大事に育てていたのに、すぐに元気がなくなってしまった…」
そんな切ない経験はありませんか?
実はそれ、あなたの育て方が悪いわけではないかもしれません。
生産者の視点から言わせていただくと、
「一般的な生花店(お花屋さん)の環境は、アンスリウムにとって過酷すぎる」という、
ちょっと衝撃的な事実があるのです。
なぜ、華やかなはずの花屋で植物が弱ってしまうのか?
今回から2回にわたって、その裏にある業界の事情と、
これからの賢い植物の選び方についてお話しします。
第1回の本記事では、アンスリウムの体力を奪う「決定的なミスマッチ」についてまとめます。
アンスリウムは「店舗のディスプレイ係」?
まず、生花店にとっての「商品優先順位」の話をしましょう。
お店には、寿命が短い「切り花」と、比較的長持ちする「鉢物(アンスリウムなど)」が並んでいます。お店の人は、どちらを優先して売らなければならないでしょうか?
答えは明白、「足の早い(枯れやすい)切り花」です。
アンスリウムは非常に丈夫で長持ちする植物です。
そのため、お店側としては「急いで売らなくても大丈夫。しばらくはお店を華やかにするディスプレイとして置いておこう」と考えがちです。
その結果、他の切り花がどんどん回転していく中で、アンスリウムだけが長く店舗に留め置かれることになります。
忙しい店舗運営の中で、鉢物専用のケアが後回しにされ、徐々に体力を削られていく……というのが一つの要因です。
致命的なミスマッチ「ショーケースの温度」
しかし、もっと直接的で、アンスリウムの品質維持を妨げる最大の要因があります。
それが「温度」です。
皆さんもご存知の通り、生花店に入ると夏場でもひんやりとしていますよね?
そして、美しい切り花が並ぶガラス張りのショーケース。
あの中はさらに低温に保たれています。
ここに、決定的な矛盾があります。
| 植物の状態 | 必要な温度 | 目的 |
| 切り花 | 8℃〜15℃ | 開花を遅らせ、鮮度を「保存」するため |
| アンスリウム | 20℃以上 | 本来の熱帯環境で**「生育」する**ため |
生花店としては、主力商品である切り花を長持ちさせ、売上につなげるために、店内に大きな冷蔵庫のようなショーケースを置く必要があります。
もちろん冷やしているのはショーケース内でしょうが、その冷気は店舗内も冷やすことになります。
さらに、この8〜15℃という温度帯は、熱帯植物であるアンスリウムにとっては「生育が停止する」限界の寒さなのです。
室温が低くなった店内に長く置かれたアンスリウムは、じわじわとダメージを蓄積しています。
「生花店とアンスリウムは、そもそも相性が悪い」。
これが、生産者としてつぐづく感じてしまう本音です。
(第2回へ続く)