最近話題の透明鉢。
鉢の中が透けて見えてオシャレだと評判のようですね。
「透明鉢の使用についてどう思うか?」という問い合わせをいただいたので、思うところを書き留めることにしました。
見た目がすごくオシャレな透明鉢
一般的に生産者が商売のために植物を大きく育てる時は、黒色の光を通さない鉢を使います。
当園も同様で、基本的に黒色の鉢を使います。
それに比べ、透明鉢は中が見えるということでとても面白い素材ですね。
写真は楽天市場のキャプチャー画像ですが、ご覧の通りとてもオシャレな鉢に仕上がっています。
最近は映えを意識した商品が増えていますから、センスあるなぁと感心します。
多くの植物の根は光を嫌う
今回「アンスリウムを透明鉢で育てても良いのか?」という問い合わせをいただきました。
これについて当園としては、「何を目的にするかで回答が変わる」と回答しております。
なぜかというと、一部の植物を除き基本的に「根は光を嫌う習性がある」ためです。
根は暗い鉢の中で伸びていく時、「ローリング」と言われる現象が起きます。
鉢の内壁に当たった根が内壁に沿ってグルグルと巻かれるように伸びていく現象です。
その結果できあがるのが「根鉢」で、この根鉢の出来を見て鉢上げの可否を判断します。
この時根には光が当たりませんから、白い根が伸びていくことになります。
透明鉢は、植物を上手く育てるなら✕
見た目・面白さ重視なら○
これを透明の鉢に変えると、鉢の外から巻かれた根が見えることになります。
根にも光が届くようになると、光を嫌う根は土の中に引っ込もうとします。
根鉢の形成が妨げられることになり、鉢の中の根の総量が減ることになります。
また光が根に当たることで、根は徐々に光合成色素を作り出し、緑色になっていきます。
その結果、根の「要水分を吸収する」役割が失われ、根自身が光合成をするようになります。
こうなると根は本来の役割を失うことになり、生育に支障が出てきます。
多くの植物で「おおっ!根がどんどん生長しているのが見える!」とはなりません。
こういう事情があるため、植物を育てることを目的とするなら透明鉢の使用は✕となります。
一方、既に育った植物を透明な鉢で楽しむことを目的とするなら○となります。
そのため、一概に良いとも悪いとも言えないのが難しいところです。
育成段階では黒鉢を使い
出荷時に透明鉢に植え替える
とはいえ、せっかく透明鉢の存在を知ったので、できれば変えたいという方もいるでしょう。
そこで、透明鉢の賢い使い方をお伝えしたいと思います。
ズバリ「株を育てる時は黒色の鉢で育て、根が十分に育った段階で透明鉢に切り替える」です。
育ちきった株なら新しく根を伸ばすスペースも限られていますから、あくまで「透明鉢で株をぐんぐんっ育てるぞ!」というわけでなければ、このタイミングで透明鉢に植え替えてあげましょう。
「どうしても透明鉢を使って育てたい!」ということであれば、その外側を化粧鉢で覆うのもアリですが、これだと本末転倒にはなりますね。
たた上述した通り、光が鉢の中に差し込む環境は根にとって良いものではないので、植え替えるかどうかは各自が判断をすれば良いと思います。
こういう新しい取り組み・提案が増えるのは良いこと
透明鉢の使用はこれまで私も何度か検討しました。
植物を育てる作り手として、透明鉢の使用がどういう影響を及ぼすのは概ね理解しています。
その上で、こういう新しい取り組みや商品の提案が増えることはとても良いと思っています。
なので、消費者サイドは然るべき知識を正しく知っていただいた上で、マーケティングに振り回されずに賢く買い物をしていただきたいですね。