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(後編)植物は生き残るために何をするのか

アンスリウム

前編では、いじめや金融リテラシーといった、私たちが現代社会を生き抜くための「個人の防衛」についてお話ししました。
「誰かに守ってもらうのを待つのではなく、自ら力を蓄える」という考え方は、実は自然界、特に私が日々向き合っている植物の世界では当たり前の「絶対原則」です。
後編となる今回は、動くことすらできない植物たちが、いかにして過酷な環境から自分を守り、生き残ることを考えているのか。
その「したたかな防衛術」を深掘りしていきたいと思います。

逃げられない者の覚悟:環境への「順応」

植物には、私たち人間のように嫌な環境から逃げ出すための「足」がありません。
暑すぎても、水がなくても、隣に嫌な奴がいても、その場で立ち向かうしかないのです。

そのため、植物は環境が自分にマイナスの影響を与え始めた瞬間、驚くべきスピードで「自己改革」を始めます。
これを私たちは「順応」と呼びますが、その本質は徹底した自己防衛システムです。

例えば、水が極端に不足したとき。
植物は「誰かが水をくれる」のをただ待つようなことはしません。
彼らは即座に、自分の中で優先順位をつけます。
古い組織に含まれる水分やミネラルを、これから成長すべき若い芽や、生命維持に不可欠な中心部へと移動させるのです。
これを「再転流(さいてんりゅう)」と言います。

この時、植物は自らの古い葉を黄色く変色させ、枯らせていきます。
これは「病気」ではなく、全体を生かすための「戦略的な撤退」です。
優先順位の低いものを切り捨て、最も大切な核を守る。
自身(株)が生き残るためのこの潔い防衛術は、情報過多でリソースが分散しがちな現代の私たちにとって、学ぶべき点が多いのではないでしょうか。

「見栄」を捨てて「生存」を取る

アンスリウムを育てていると、環境が悪化した際に真っ先に起こる変化があります。
それは「花(仏炎苞)が枯れる」こと、あるいは「次に咲く花が小さくなる」ことです。

花は植物にとっての子孫繁栄の象徴であり、最も華やかな部分です。
しかし同時に、維持するために膨大なエネルギーを必要とする「大食らいの組織」でもあります。
肥料が足りない、光が足りないといった緊急事態において、植物は迷わずこの華やかな花を切り捨てます。

「今は着飾っている場合ではない。まずは株そのものが生き残らなければ、次のチャンスはない」

植物はそう判断するのです。
花へ行くはずだった栄養を制限し、そのエネルギーを「葉」を増やすことに回します。
葉を増やせば、より多くの光合成ができ、自力でエネルギーを作り出す力が高まるからです。
世間体や見栄に固執して身を滅ぼす人間が多い中で、生き残るために「今の形」を迷わず変える植物の合理性は、まさに究極の防衛と言えます。

光すら武器に変える、情報の取捨選択

光の強弱に対する防衛も実に見事です。
光が強すぎて自分を焼き尽くしそうなとき、植物は葉緑素をあえて分解します。
葉の色を薄くすることでダメージを回避しようとするのです。
逆に光が足りなければ、葉の面積を限界まで広げます。
わずかな光線量も逃さないようにアンテナを広げるわけですね。

これは、前編でお話しした「情報の取捨選択」に通じるものがあります。
自分にとって毒となる過剰な刺激(情報)は受け流し、不足している生きるための知恵(光)は、形を変えてでも必死に掴み取りに行く。
は自分が生き残るため常に「今の自分に何が必要か」を細胞レベルで理解しています。
そして、自身を適応させ続けているのです。

植物の「したたかさ」を血肉にする

植物は非常に賢いです。
彼らの美しさは、実はこうした「生き残るための必死の防衛」の積み重ねの上に成り立っています。

私たちが植物から学ばなければならないのは、その「したたかさ」です。
「誰かが助けてくれる」「環境が良くなるのを待つ」といった受動的な姿勢ではなく、必要とあらば自分を壊してでも作り変える強さ。

アンスリウムが過酷な環境を乗り越えて再び美しい花を咲かせるとき、その花は以前よりもずっと強く、逞しいものになっています。
この姿勢から得られるものは結構たくさんあると思います。

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