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(ひとりごと)株分けした子株が売られている件

ひとりごと

最近メルカリなどのフリマサイトで、アンスリウムの子株が売られているのをよく目にします。
個人の方が育てた株を株分けして売られているということですね。
こういうのを見て「上手く育てられているなぁ」と思う反面、「出品者はロイヤリティについては考えているのだろうか?」と心配もしています。
そんな矢先、本件について最近当園の知り合いの方から「農家にとっての迷惑行為ではないか?」という声をいただきました。
今回はそのあたりの思うところをまとめてみようと思います。

株分けして個人で楽しむのはOKだけど商売をするのはNG

国内で出回っているアンスリウムについて言えば、これが苗メーカーが作った一応のルールです。
基本は殖やしてはいけないし、何らかの方法で殖やせても商売に使うのはNG。
隠れて売るにしても、非公式に殖やした子株に親株の品種名は使えません。
アンスリウムリリーを親株として株分けした子株を「アンスリウムリリー」という表記で売ってはならず、「アンスリウム」としか記せないのです。
なので、冒頭の写真のようなフリマサイトでのこれらの出品は完全な違法になりますね。

インターネットの登場により、個人の特定はとても簡単にできてしまいます。
メーカーから訴えられたら、出品者はほぼ100%負けるでしょう。
「そんなの知らなかった」では済まされないのが世の中です。
ルールを知らないほうが悪いのです。

クレームが増えればフリマサイト側は何らかのルールを作って取り締まってくるでしょう。
すると出品者側はあの手この手でそのルールをすり抜けてきます。
結局不毛なイタチごっこが続くというオチがなんとなく想像できますね。

そもそもなぜ株が分かれるのか(株の分げつ・ブッシュ化)

ルールや法律的なお硬い話はさて置き、経済合理性の観点から本件を見てみましょう。
要は「株分けされた子株を買うことはお得なのか?」ということです。

そもそも株の分げつ(ブッシュ化)はなぜ起きるのでしょうか。
アンスリウムは上手く育てていればファイトマーを形成して上へ上へと伸びていく植物です。
その過程で花をつけ、種子を作って世代交代していきます。
そんなアンスリウムが株を殖やす方向に向かうのはなぜでしょう。
うちの動画チャンネルで過去に話したと思いますが、基本的にブッシュ化は株へのストレスが原因です。
子株というのは、ストレスを受けた親株が生存戦略の一環で作るものなんですね。
表現が紛らわしいですが、「子株」は親株にとっての子孫ではありません。
親株が受粉して作られる種子が本当の子孫ということになります。
子株が取れるとなんとなく得した気分になりますが、親株はストレスを受けた結果子株を作ったわけです。
そんな親株から出てきた子株ちゃんは、上手く育ってくれると思いますか?

作り手目線で言えば、株分けされた子株は出来損ない

商品として作られた幼苗と違って、子株はとにかく大きさも育ち方もバラバラです。
仮に子株を取って植えても全部が全部まともに大きくなるわけではありません。
作り手目線で言えば、「個別に面倒を見ないといけないめちゃくちゃ手のかかる奴ら」というのが本音ですね。
子株は上手く育つかどうかも怪しい出来損ないというイメージが強いのです。
結局手間がかかるので、お金を払って正規の株を調達した方が合理的なんですね。

これらを考えると、素性のわからない方が趣味で作った子株はかなりリスキーだと思います。
少なくとも私はちゃんとしたものを買いたいなと思いますね。

まとめると

「殖やして売る」というのは農家が基本的にやっていることです
そのため、本件についてあまりえらそうなことは言えません。
ただ、趣味でやっている人に勝てないような商品しか作れず、ルールを振りかざして文句を言うしかできなくなったら、生産者の辞め時だと思っています。
プロなら結果で語るという姿勢を、私は貫いていきたいですね。

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